英語が聞き取れない7つの原因
相手に伝わる英語を話すためには、音声性質の違いを正しく理解する必要があります。日本語と英語の違いを正しく理解せずに音だけを真似しようとしても、再現性が高いとは言えません。
特に後天的に言語を習得する場合は、感覚的に理解しようとするよりも頭で理解してから実践する方が定着率が高いです。そのため、発音矯正コースでは最初に英語の音声性質についての理解を深めていきます。
本レッスンでは、「英語が聴き取れない」という現象を引き起こす7つの要因について説明していきます。
- 原因1. 英語には子音で終わる単語が多い
- 原因2. 連続する子音は聴き取りにくい
- 原因3. 単語が繋がると消える音がある
- 原因4. 日本語にない音が英語にはある
- 原因5. リズムに違いがある
- 原因6. わからない単語は聴き取れない
- 原因7. 発音の仕方を知らないと聴き取れない
それぞれの原因について具体例を元に説明していきます。
原因1. 英語には子音で終わる単語が多い
まずは、以下の例文を聴いてみましょう:
- As a matter of fact, he tried to wipe out all of them. Horrible! Horrible!
英語では、fact、allのような子音で終わる語がたくさんあります。
ところが日本語には、「ご飯(ゴハン)」などの語尾にくる「ン」を除けば、子音で終わる単語というものがありません。
そのため、wipe outのように子音で終わる後の次に母音で始まる後がくると、日本語の耳にはwipeの終わりの子音 [ p ] がoutの方により強く結びついて「ワイ・パウト」のように音がくっついて聴こえます。
例えば他にも、
- I’ll get it.
- Mary greeted John with a peck on the cheek.
のように、「子音」の後に「母音」が続く場合はほとんどの場合で音がくっつき音声変化を起こします。これを「リエゾンの法則」と言います。
また、英語には単語の終わりの子音を「のみ込んでしまう」癖があります。
最初の例文では fact [fˈækt] には終わりに [ k ] [ t ] の2つの子音がありますが、両方の音が消失していることが分かります。
語末の音が消失してしまう例として、例えば以下のようなものがあります:
- It’s a map.
- It’s a mat.
- It’s a Mac.
日本語に比べて、英語は子音に繊細な言語です。
日本語話者は、無意識に子音を母音と結び付けて発音する傾向が強いので、その点を注意して学習する必要があります。
原因2. 連続する子音は聴き取りにくい
factの終わり子音は2つですが、例えば twelfths [ twélfθs ] には 4つ子音があります。
その上、子音でおわる語の後に子音で始まる語がくれば、また新しく子音の連続性が出来上がります。
例えば以下の例文を聞いてみましょう:
- They kept quiet.
- John writes film scripts.
A.では [pktw] の4つ、B.では [lmskr] の5つも子音が並んでいます。さらに、kept quietでは [pt] の部分が「のみ込まれている」いるので聴き取ることがより難しくなります。
原因3. 単語が繋がると消える音がある
いわゆる「音声変化」というもので、前後の単語の音が繋がることで元の音声とは違った別の音が生成されます。
例えば先ほどの例文を聴いてみると:
- As a matter of fact, he tried to wipe out all of them. Horrible! Horrible!
赤字の部分の音が消失していることが確認できます。また表現がある程度決まっている文は、単語そのものが消えるケースがあります。
例えば以下のような例です:
- (Did you) have a good time?
- (Have you) been to Paris?
- (Did you) enjoy it?
原因4. 日本語にない音が英語にはある
当然のことですが、わからない音を聴き取ることはできません。
そのため、英語の母音は日本語の「アイウエオ」よりもずっと数が多いことをしっかりと認識することが重要です。
例えば:
- It’s the wrong way to do it.
- It’s a long way to Sweden.
- This is a picture of a mouse.
- This is a picture of a mouth.
- This weighs a ton.
- Hold your tongue.
[ r ] [ l ] [ s ] [ th(θ) ] [ n ] [ ng(ŋ) ] は、いずれも日本語の音には存在しません。
仮に日本語の音を当てはめて話しても些細な違いに思いますが、ネイティブが感じる違和感はとても強く、結果としてコミュニケーションの不具合が生じやすくなります。
原因5. リズムに違いがある
英語では、「リズム」も聴き取りに大いに関係しています。
例えば以下の例文を聞いてみてください。最初に英語のリズムで発音したケース、次に日本語のリズムで発音したケースが流れます:
- 英語:It is a beautiful day
- 日本語:It is a beautiful day
「英語のリズム」は、音の強弱がハッキリとしていて滑らかに音が発音されます。強勢を表す赤丸部分は2つのみです。
一方で、「日本語のリズム」は、どの音も同じ強さ・速さで発音されていることが分かります。つまり、” it ” という単語も「イ」「ト」それぞれの音に強勢がかかっていることです。
「英語のリズム」のように、強さ・弱さ・速さ・遅さの違いがはっきりしているリズムを「強勢拍子」のリズムと言います。一方で「日本語のリズム」のように、強弱・遅速が平等なリズムを「音節拍子」のリズムと言います。
例えば日本語でも:
- 私は昨日京都に行ってきました
上記の文を「音節拍子」と「強勢拍子」で聞いてみると、「強勢拍子」は英語母語話者が話しているように聴こえます。これはつまり、英語の強勢拍子を日本語に適応させているから起こっています。
英語を聴き取る上で最も重要な要素の一つがこの「英語のリズム」です。日本語はリズムに変動があっても聞き取ることが可能ですが、英語はリズムがずれるだけで聞き手はほとんど理解できなくなってしまうのです。
原因6. わからない単語は聴き取れない
例えば以下の例を聴いてください:
- The Premier’s remark exasperated the Opposition.
上記の例で “exasperate” という単語を知らない場合「イグザなんとかって言ったな」と感じるだけで、それ以上のことは分からないということになります。
他にも、”wipe out” のような簡単な単語が並んでいる場合でも、「拭き取る」という意味だけでなく「殺す」という意味を持っていることが分からなければ、意味を理解することができません。
つまり聴き取り力を高めるためには、リスニングの勉強だけでなく語彙力を伸ばすことも重要なのです。
また、もう一つ聴き取り能力向上に必要なのは「文法力」です。以下の例文を聞いてみてください:
- The bartender threw out the drunk.
上記の文をディクテーションした場合、”The bartender throughout the drunk” と誤って書いてしまうケースがあります。というのも “threw out” と “throughout” の音が一緒のためです。
音だけを正確に捉えることができても、音声情報を正しく理解できないことがあります。そのため、文法力で音声情報をカバーすることが聴き取りでは重要になります。
「語彙力と文法力の向上は、聴き取り能力の向上にとって必須の条件である」ということを理解し、リスニング勉強以外も継続して学習に取り組む必要があります。
原因7. 発音の仕方を知らないと聴き取れない
「ネイティブ・スピーカー並の英語が話せないと正しく聴き取れない」と誤解する人が多いですが、正しくは発音の仕方を知ればネイティブに遜色のない程、聴き取り能力が向上します。
発音の仕方とは「舌の位置・唇の形・音を出すポイント」の3点を理解して、英語の音を常に再現できる状態のことを指します。上記の3点を他人に教えることができるレベルまで理解することが聴き取り能力を向上させる一歩になります。
上記の原因を認識して、自分が苦手な課題を解決すれば「英語の音が聴き取れない」という課題は必ず解決します。下手にショートカットしようとはせずに、一歩ずつできないことをできるように改善を積み重ねていきましょう!