強勢が置かれる位置
前回のレッスンでは英語は「強勢拍子」の性質があり、日本語は「音節拍子」の性質があることが分かりました。
今回のレッスンでは、「どのような場面で強勢がかかるのか」を具体例とともに学んでいきます。
1. 情報の焦点に強勢がおかれる
基本的に文強勢は、「文を発する人がその中で重要だと考える単語」にストレスがかかります。
話し手が考える「重要さ」にはいくつかパターンがあるので、そのパターンを把握しておくことで発音の再現性の向上やリスニング力の向上に繋がります。
まずは例文をみてみましょう:
- It was an awfully hot night.
“it was an” の部分は情報として大きな価値はありません。伝える必要性が高くない情報なので、文強勢がかかりません。
一方で “awfully hot night” は情報の価値が高く、この部分が伝わらないと聞き手は話の内容を理解することができません。そのため、情報伝達の観点で重要な情報である “awfully hot night” の部分に文強勢が置かれています。
次に以下の例文をみてみましょう:
- A: What sort of night was it?
- B: It was an awfully hot night.
上記の文脈を見ると、Aが質問の中で “night” という単語を使っていることが分かります。Aがすでに情報の一部を限定しているので、Bは回答の際に “night” 強調する必要がないと考えられます。
“night”という情報は伝える必要性が低くなったので、最初の例文と同じメッセージでも “night” には文強勢が置かれません。
続いて以下の例文をみてみましょう:
- A: Was it hot last night?
- B: It was an awfully hot night.
上記の文脈の場合、Aが “hot, night” の両方の単語を使っているのでBの回答では “awfully” のみに文強勢が置かれています。
このように文強勢を置く位置によって、メッセージで伝えたい意図が変わります。
最後に強勢を置く位置によって、メッセージの意図が変わる例をみてみましょう:
- I visited Hawaii with my wife.「妻とハワイにいきました」
- I visited Hawaii with my wife.「(他人の妻ではなく)私の妻とハワイに行きました」
文強勢をつける部分を一つずらしただけで、上記のようにメッセージの意図が変わります。
日本語では伝える内容を変えることでメッセージの意図を変化させる傾向が強いですが、英語では強勢の位置を変えることによってメッセージの意図を変更させる傾向が強いのです。
2. 関心の焦点に強勢が置かれる
話し相手がビックリするような情報を伝えてきた時など、その情報をオウム返しに繰り返して、驚きや皮肉や喜びを表すことが英語ではあります。
以下の例を見てみましょう:
- A: Actually, I don’t love him.
- B: You don’t love him!? Then why are you going to get married?
- C: Peter is well-read!
- D: Peter is well-read, indeed. He’s even heard of Shakespeare.
- E: You can have my Rolex.
- F: I can have your Rolex!? Oh, how very kind of you!
相手が話したことに対して驚きや喜びの感情が出るということは、つまりその情報に対して関心が向いているということです。
関心がある情報は、話し手にとっては重要な情報なので文強勢が置かれるのです。
また英語特有な表現が、CとDのやりとりで、Dは相手の言葉に “indeed” を足して表面上相手の言っていることに対して賛同しているように見せながら、実のところは内容を皮肉して表現しています。
こうした「英語の癖」を覚えておくことも、リスニング力の向上にとって重要なプラス材料になります。
3. 情報上重要でない単語に文強勢をおくと文全体が強調される
「1」で説明した内容に矛盾しているように感じますが、言語には様々な矛盾した原理があります。
まずは例文を見てみましょう:
- 通常の文:I am doing my homework. 「私は宿題をしています」
- A: Why don’t you start doing your homework?
- B: I am doing my homework!! 「だから、宿題をしてるったら!」
- 通常の文:I have mailed the letter.「私は手紙を(ポストに)出しました」
- A: I don’t think you have mailed the letter yet.
- B: But I have mailed the letter!!「だから、ちゃんと(ポストに)出したってば!」
- A: What are you doing? 「何をしているんですか?」
- B: What are you doing?「おい!何してるんだ!」
上記の例では、情報上の重要性のない “am/have/are” に強勢が置かれることで、文全体が強勢が置かれて意図が変わっています。
日本語では言い回しが変わる場面ですが、英語では強く発音を出す位置を調整することでその時の感情やメッセージの意図を調整する癖があります。
4. 文の終わりに強勢を置くことで発話を強調する
文の終わりに強い文強勢を置くことは、その発話を強調的にする働きがあります。
最後に以下の例を見てみましょう:
- That’s my car.「それは私の車です」
- That’s my car!「それは私の車だぞ!」
- That’s not my fault.「私のミスではありません」
- That’s not my fault.「私のせいじゃないったら!」
- By all means.「ぜひそうしましょう」
- By all means.「もちろんです、是が非でもそうしましょう!」
単語の重要性・非重要に従って発音の強弱を区別することは「英語の癖」の一つです。
日本語には馴染みがない考え方なので、この癖に慣れてリスニング能力を高めていきましょう!
練習課題
以下の例文を中心にオーバーラッピングの練習をしてみましょう。
強勢を置くポイント以外は「弱く・速く」発音することを意識して、文強勢のある英語を発音できるようにしてみてください。
- It was an awfully hot night.
- It was an awfully hot night.
- It was an awfully hot night.
- I visited Hawaii with my wife.
- I visited Hawaii with my wife.
- I am doing my homework.
- I am doing my homework!!
- I have mailed the letter.
- But I have mailed the letter!
- What are you doing?
- What are you doing?
- That’s my car.
- That’s my car!
- That’s not my fault.
- That’s not my fault.
- By all means.
- By all means.