強勢が置かれない音節
これまでのレッスンで「文強勢のある単語を強く・ハッキリ発音する」ことが英語の特徴であることが分かりました。
しかしそれとは別に、「文強勢のない単語を弱く・曖昧に発音する」ことを正しく理解しておくことも同じように大切です。というのも、慣れない外国語を発音すると、どれだけ意識しても一つ一つの語を平等な強さで発音してしまいがちだからです。
そこで今回のレッスンでは、「どのような場合に単語が文強勢を受けないのか」についても理解を深めていきましょう。
文強勢を受けない単語を理解することで、「音の消失」でリスニングできないという事態を防ぐことができるようになるはずです。
1. 同一語が繰り返される時は弱くする
発話の中で「同じ語が繰り返される場合」もしくは「同じ意味を表す語が繰り返される場合」は、その部分はあえて弱く発音されます。
まずは例文をみてみましょう(青字が文強勢のない単語):
- A. I like Mary but I don’t love Mary.
- B. The patient was born in Hawaii and wishes to die in Hawaii.
- C. We want the bill to be passed in the Diet but the Opposition is dead-set against the measure.
- D. John consumes 200 bottles of whiskey a year and Bill smokes 3,000 cigarettes annually.
Aでは “Mary” という語が繰り返し出てくるので、2回目の “Mary” では文強勢が失われていることが分かります。Bも同様に “Hawaii” という語が繰り返し使われているので、2回目の “Hawaii” では文強勢が失われています。
また、 Cでは “the bill(法案)” という語と “the measure” という語が同義で使用されているため、2回目の “the measure” では文強勢がなくなっています。Dも同様に “a year” と “annually” が同義であることが分かるので、文強勢の消失が確認できます。
上記の例から分かるように、発話内で同じ意味の語が繰り返される場合は文強勢が消失する傾向があります。
それを踏まえた上で、次の例文もみていきましょう:
- John killed himself.
- They believe themselves to be infallible.
- They blame each other.
上記の例でも同一性を表す語は文強勢を受けていません。
留意点として、”-self形 / each other / etc…” が「その人自身」をあえて強調する目的で使われる場合は、文強勢が逆に置かれるので注意してください。
例えば以下の例では、あえて “himself” の部分に強勢が置かれています。
- Eg. He himself admits it.
2. 前後関係から容易に推測できることは文強勢を受けない
前後の文脈から内容がすぐに想像できる情報も、文強勢を受けません。
まずは以下の例を聞いてみましょう:
- I have some books to read.
- I have some books to burn.
- I have a point to make.
- I have a point to emphasize.
- I have a problem to solve.
- I have a problem to computerize.
いずれの例文も最初に読まれている例文は文強勢を受けていません。なぜなら、名詞と動詞の関係性が容易に理解することができるからです。
つまり、情報上の非重要性・重要性の差が結果として文強勢を受けない・受けるの差になっているということです。
3. 意識の中にいつでも存在することは文強勢を受けない
最後に、自分のいる「場所」や自分が感じている「時間」は、その意識が常に頭の中にあるため、情報の重要性が低く文強勢を受けません。
次の例文をみてみましょう:
- A: How far to Roppongi?
- B: About two miles from here.
- A: When will the show start?
- B: About an hour from now.
- I’m leaving for Miami tomorrow.
必ずしも「時を表す副詞」が文強勢を受けないというわけではありません。情報を強調するときや、相手と時間意識を共有する時は逆に文強勢が置かれる傾向が強いので注意してください。
非重要な単語を弱く・曖昧に発音することは、日本語ではフォーマルではなく、むしろ避けられる傾向があります。
だからこそ、このような「英語の癖」を理解し、日本語とは全く違う音声を出しているという感覚を身につけることが重要になります。
練習課題
今回の例文を中心にオーバーラッピングの練習をしてみましょう。強勢を置くポイント以外は
「弱く・速く」発音することを意識して、文強勢のある英語を発音できるようにしてみましょう:
- I like Mary but I don’t love Mary.
- The patient was born in Hawaii and wishes to die in Hawaii.
- We want the bill to be passed in the Diet but the Opposition is dead-set against the measure.
- John consumes 200 bottles of whiskey a year and Bill smokes 3,000 cigarettes annually.
- I have some books to read.
- I have a point to make.
- About two miles from here.
- About an hour from now.
- I’m leaving for Miami tomorrow.