発音基礎02. 日本人が苦手な子音①
1. 日本語話者が苦手な [r] [l]
日本語話者が苦手な子音は、基本的に [r]・[l]・ [s]・ [θ(th)] の4つの子音です。
発音習得はできることから順番に負荷をあげるよりもできないことから順に徐々に負荷を下げる方が学習効率が高いので、まずは苦手な音から克服していくことが重要です。
[ r ] の発音については、前回のレッスンで示した以下の図を参照にしてください:
イメージとしては「舌先で喉の奥を触る」感覚で舌を持ち上げます。[ r ] は上あご(口の天井)に舌が触れない点に注意しましょう。
次に [ l ] の音ですが、まず「タッタッタッタッ」と発音してみてください。
舌先が「上の前歯の裏側」または「その少し上の歯茎」に接触する感じが分かります。(特に「ッ」の音で息を止めるとより分かりやすいです)
歯茎に接触した舌先を離さないようにして、少しずつ口の奥の方へスライドさせていきます。
前歯の付け根の少し上に出っ張りがあるのがわかるはずです。その出っ張りのすぐ後ろ(奥)に舌先を押し付けて「ウー」と声を出すと [ l ] の音が出ます。
ネイティブに [ l ] の音を学ぶと、よく「前歯の裏に舌先をつける」と教わりますが日本人は舌がもともと短いこともあり、うまく [ l ] の音が出ません。
「舌をどこにつけるか」ではなく「口の天井で最も置きやすい場所に舌をつける」ことを意識すると良いです。(そしてデコピンをする要領で、口の天井につけた舌を勢いよく弾きます)
上記のイメージが理解できたら早速以下の例文で練習してみましょう:
- At this rate, we can’t stay at this hotel.
- At this late hour, we can’t wake up our children.
- You must understand this problem in the right light.
- Will you make a right at the next traffic light?
- This is what remains of the broken mirror.
- This is what remains of the broken miller.
- John is swimming in the raw.
- John is learned in the law.
- Bill is a judicious reader.
- Bill is a judicious leader.
2. 日本語話者が苦手な発音 [s] [θ(th)]
[s] と [ θ(th)] も日本語話者は苦手な音です。
[ θ ] は「舌先を前歯の下につけて s のような音を出す」という説明が一般的ですが、少し語弊があります。
というのも [ s ] は非常に強い音であるのに対して [ θ ] はごく弱い音だからです。 [ θ ] の音は「か細く出す」ということを念頭に置きましょう。
また「前歯の下につける」というのも誤りです。厳密には、ピッタリと舌をつけずに、舌先を前歯の舌に近づけて舌先と前歯の間を空気が通るようにしなくてはいけません
上記の2点を意識して [ θ ] の音は練習するようにしましょう。
[ s ] は 「歯茎摩擦音」という音で、日本語の「サシスセソ」とは違います。口を横に「イー」と開いて、歯の間に空気を通して「スー」という音を出すイメージです。
日本語の「サシスセソ」とは違い、唇の形が横に伸びることを意識して練習しましょう。
上記のイメージが理解できたら早速以下の例文で練習してみましょう:
- sin [ sin ] – thin [ θin ]
- sing [ siŋ ] – thing [ θiŋ ]
- sought [ sɔ:t ] – thought [ θɔ:t ]
- sink [ siŋk ] – think [ θiŋk ]
- sank [ sæŋk ] – thank [ θæŋk ]
- mouse [ maus ] – mouth [ mauθ ]
3. 破裂音 [p, t, k] [b, d, g]
[ p ] [ b ] は日本語でも近い音があるので、そこまで難しいと感じることはないと思います。しかし、ほんの些細な違いを理解していないと、リスニングと発音に影響するので十分注意しましょう。
[ p ] の音を出すときは、唇を閉じて息が口や鼻の外へ出ていかない状態を作り肺から空気を口の方へ送ります。
送られた空気は出口がないので口の中で「密室」状態なり、この状態で唇を勢いよく開くことで風船に針を刺したときのようにパッと音が外に出ます。
このように「密室」から一気に空気を出す音を「破裂音」と言います。
p, t, k ] と [ b, d, g ] の音はいずれも破裂音です。口の中で密室(専門用語で「閉鎖」と言います)をつくり、音を出す(専門用語で「解放」)位置によって音が変わります。
音が解放される位置が、上下の唇の場合 [ p, b ]、舌先と歯茎の場合 [ t, d ]、舌の奥とあごの奥の場合 [ k, g ] の音に変化します。
また英語の [ p, t, k ] の音には共通点があります。
それは強勢のある母音の前に置かれたとき、通常よりも強い息が吐き出されるということです。これを「気息」と言い、日本語にはない音声性質なので注意しましょう。
上記のイメージが理解できたら早速以下の例文で練習してみましょう(気息を表すために、気息部分に[ h ] を表記しています:
- It’s a pen. [ phen ] – It’s the peak. [ phi:k ] – It’s a pan. [ phæn ]
- It’s tea. [ thi: ] – He’s tall. [ thɔ:l ] – It’s a tank. [ thæŋk ]
- It’s cool. [ ku:l ] – His name is Ken. [ khen ] – It’s a can. [ kæn ]
[ p, t, k ] (無声破裂音)の音でもう一点注意することは、語句の終わりが無声破裂音の場合、音が飲み込まれる性質を持っているということです。
これは、密室でためた空気が語句の終わりになると解放されずに鼻からそっと空気を逃すことで起こる現象です。
以下の例文を聞いてみましょう:
- It’s a map.
- It’s a mat.
- It’s a Mac.
最初の例は気息をあえてつけたケース、2回目のケースは通常の発話のケースです。音だけを追うとリスニングが難しいと思います。
他にも:
- That pen [ ðæt pen ]
- act [ ækt ]
上記の場合、音を解放する前に次にくる破裂音のために閉鎖がかぶさって赤字の部分の音が飲み込まれています。
気息の有無などはかなり細かい要素ですが、日本語にない音声性質を理解することで発音がより繊細になり、同時にリスニング力も向上します。
日本語とは全く異なる音を扱っているという意識を持って、英語に向き合っていきましょう。
練習課題
以下の例文を声に出して発音して、録音してみましょう。
録音した音声と音源を聴き比べて、できる限り音声性質が似るように試行錯誤してみてください。
- At this rate, we can’t stay at this hotel.
- At this late hour, we can’t wake up our children.
- You must understand this problem in the right light.
- Will you make a right at the next traffic light?
- This is what remains of the broken mirror.
- This is what remains of the broken miller.
- John is swimming in the raw.
- John is learned in the law.
- Bill is a judicious reader.
- Bill is a judicious leader.
- sin [ sin ] – thin [ θin ]
- sing [ siŋ ] – thing [ θiŋ ]
- sought [ sɔ:t ] – thought [ θɔ:t ]
- sink [ siŋk ] – think [ θiŋk ]
- sank [ sæŋk ] – thank [ θæŋk ]
- mouse [ maus ] – mouth [ mauθ ]
- It’s a pen. [ phen ] – It’s the peak. [ phi:k ] – It’s a pan. [ phæn ]
- It’s tea. [ thi: ] – He’s tall. [ thɔ:l ] – It’s a tank. [ thæŋk ]
- It’s cool. [ ku:l ] – His name is Ken. [ khen ] – It’s a can. [ kæn ]