発音基礎03. 日本人が苦手な子音②
1. 有声音と無声音
喉仏(のどぼとけ)の内部に声帯という靭帯があります。
この声帯が振動しているときに出る音を「有声音」、声帯が開いている時に出る音を「無声音」と呼びます。
試しに指先を喉仏に軽く当てて「アーイーウーエーオー」と言ってみてると、指先に振動を感じると思います。声帯が振動している音なので「有声音」です。
次にロウソクの火を消すイメージで「フーッ」と息を吐いてください。指先に振動が感じられないはずです。つまり声帯が開いた「無声音」です。
日本語は基本的に有声音で構成されているので、日本語話者にとって無声音のリスニングと発音を特に難しく感じます。
有声音と無声音の区別を子音で実感するために以下の例文を発音してみましょう:
- [ s:::::::::: ](無声音)
- [ z:::::::::: ] (有声音)
日本語の「スー(su:::::)」「ズー(zu:::::)」と母音が繋がっていないことに注意してください。あくまで子音だけを出すイメージです。
2. 有声破裂音 [ b, d, g ]
前回のレッスンで紹介した [ p, t, k ] の有声音が [ b, d, g ] です。[ d ] の発音で舌先が歯茎の「少し奥」にあてられることを意識しましょう。
また [ b, d, g ] は有声音ですが、語頭にきた時の最初の音、語尾にあるときの最後の音が軽く無声化するということも理解しておきましょう。
有声破裂音 [ b ]
- Be quiet!
- Bill is a nice guy
- Hi, Bob!
- What a good club!
有声破裂音 [ d ]
- Don’t be silly!
- Dick is a nice guy.
- Stupid!
- Splendid!
有声破裂音 [ g ]
- Get moving!
- Go away!
- That’s not in vogue.
- He’s out of my league.
語末音の消失
[ p, t, k ] と同じように [ b, d, g ] も文の終わりで音が飲み込まれます。次の例文でリスニングの聴き分け練習をしましょう:
- It’s a robe.
- It’s a road.
- He’s a rogue.
破裂音 + 閉鎖音の音声変化
また、次に閉鎖音が来ると、その閉鎖によって音が「かぶされる」という現象がおきます。以下の例を聴いてみてください:
- web page
- rub down
- job creation
- lab test
- good deal
- card punch
- third base
- birdcage
- big game
- dogcart
- ragtime
- big deal
3. 摩擦音 [ f, v ]
前回のレッスンで述べた通り、[ θ ] という音は舌先と前歯の間の隙間に空気が通ったときに出る音でした。
このように口の中に隙間を作って、その間に空気を通して出す音を「摩擦音」と呼びます。
[ f ] は上の前歯と下唇の間に隙間を作って出す摩擦音です。
人によっては [ f ] の音を出すときに、下唇を噛んでいる状態から音を出すことがありますが、「唇の裏側」に前歯が触れる程度の感覚で十分音がでます:
- feet [ fi:t ], fool [ fu:l ], fox [ faks ],
- leaf [ li:f ], roof [ ru:f ], puff [ pʌf ],
- coffee [ kɔfi ], effect [ ifekt ], refine [ rifain ], refuse [ refju:s ]
[ v ] は [ f ] の有声音です。
[ f ] と同じように前歯を下唇に接した状態で「ウー」と音を出すと「ヴー」と濁った音が出ます。
有声摩擦音は、語頭や語尾での無声化が有声破裂音よりもさらに強くなる点も覚えておいてください:
- veal [ vi:l ], vet [ vet ], van [ væn ], voice [ vɔis ], voodoo [ vu:du: ],
- view [ vju: ], very [ veri ], leave [ li:v ], live [ liv ], cave [ keiv ],
- curve [ kɚ:v ], nerve [ nɚ:v ], have [ hæv ], resolve [ rizɔ:lv ], move [ mu:v ]
[ v ] と [ b ] は日本語で区別できないので、リスニングが特に難しいです。
参考までに次の音を聴き比べてみましょう:
- berry [beri], veer [ viɚ ], very [ veri ], beer [ biɚ ], curb [ kɚ:b ],
- conserve [ kənsɚːv ], curve [ kɚːv ], jive [ dʒaiv ], abide [ əbaid ],
- divide [ divaid ], invite [ invait ], inbreed [ inbri:d ],
3. 摩擦音 [ θ, ð ]
[ ð ] は [ θ ] の有声音です。
前回のレッスンで説明したように、上の前歯に舌先が触れるイメージで、歯と舌の間から息を通します。
[ ð ] は [ z ] と混合しやすいので以下の例文で聴き分けてみましょう:
- Zen(禅) [ zen ], zebra [ zi:bra ], then [ ðen ], their [ ðeɚ ], breathe [ bri:ð ],
- sees [ si:z ], seethe [ si:ð ], tease [ ti:z ], breeze [ bri:z ], teethe [ ti:ð ]
4. 摩擦音 [ s, z ]
[ s ] は以前のレッスンで紹介したように、口を横に引き伸ばして「スー」と息を通すイメージで比較的簡単に音が出ます。
一方で [ z ] は日本語の「ザ行」の音と勘違いしているケースが多いので注意してください。
日本語の「ザジズゼゾ」を発音記号で表すと [ dza, dʒi, dzu, dze, dzo ] と表記され、次のレッスンで紹介する「破擦音」という音に分類されます。
あくまで摩擦音ということを意識して以下の単語を聴いてみましょう:
- zephyr [ zefɚ ], Brazil [ brəzil ], zeal [ zi:l ], zoo [ zu: ],
- rose [ rɔuz ], zed [ zed ]
5. 摩擦音 [ ʃ, ʒ ]
[ ʃ ] の音は日本語の「シャ、シュ、ショ」と大きな違いがありません。
[ s ] は口を横に引き伸ばしますが、[ ʃ ] は唇をすぼめた状態で音が出ます。一方で [ ʒ ] は、日本語の「ジャ、ジュ、ジョ」の音ではなく [ dʒ ] という破擦音になります。
以下の単語で [ ʒ ] と [ dʒ ] の音を聴き分けてください:
- ledger [ ledʒɚ ], leisure [ leʒɚ ], pleasure [ pleʒɚ ], pledger [ pledʒɚ ],
- visual [ viʒuəl ], enjoy [ indʒɔi ], dodger [ da:dʒɚ ], measure [ meʒɚ ],
- budget [ bʌdʒɪt ], bourgeois [ buɚʒwa: ]
6. 摩擦音 [ h ]
[ h ] は「声門音」といい喉の奥から音を出します。
疲れたときに「ハーハー」と息を出しているようなイメージで肺の方から息を出すと [ h ] の音が出ます。日本語の「ハヒフヘホ」のように母音とつなげて発音しないように注意してください:
- hit [ hit ], heat [ hi:t ], hymn [ him ], heel [ hi:l ], hippie [ hipi: ],
- hooligan [ hu:ligən ], hood [ hud ], who [ hu: ], hooop [ hu:p ], hook [ huk ]
7. 破擦音 [ tʃ, dʒ ]
「破擦音」は、破裂音と摩擦音が混ざった音だと考えてください。
それぞれ日本語の「チャ、チュ、チョ」「ジャ、ジュ、ジョ」の子音と非常に近いので問題になることは少ないです。
ただ [ dʒ ] は、語頭・語末の無声化が非常に強くなる特徴があり、人によっては “church [ tʃɚ:tʃ ]” と “judge [ dʒʌdʒ ]” を聴き間違えるケースもあります:
- judge [ dʒʌdʒ ], George [ dʒɔɚdʒ ], jeep [ dʒ:p ], huge [ hju:dʒ ],
- jungle [ dʒʌŋgl ], cage [ keidʒ ], jersey [ dʒɚ:zi: ]
8. 破擦音 [ tr, dr ]
[ tr, dr ] は全く新しい音を学ぶつもりで学習しましょう。
まず舌先が [ t, d ] の場合よりもずっと口の奥の方になっていきます。以下の図を見てください:
[ r ] の音は「舌先で喉の奥を触るイメージ」と説明しましたが、その影響で舌のポジションが奥まっています。
日本の教育課程では扱われないトピックなので、十分注意してください:
- try [ trai ], train [ trein ], tread [ tred ], trespass [ trespæs ],
- treat [ tri:t ], attract [ ətrækt ], subtract [ səbtrækt ], mattress [ mætris ],
- dry [ drai ], drain [ drein ], dream [ dri:m ], dread [ dred ],
- draw [ drɔː ], address [ ædres ], adroit [ ədrɔit ]
今回のレッスンでは、日本語話者が特に苦手な英語の音を学習しました。
レッスン冒頭でも述べたように、音声習得は苦手なものから順番に習得することが効果的なのでうまく発音できない音を客観的に分析して毎日最低1分でもいいので継続して練習してみてください。
- 有声音と無声音の違いについて正しく理解する
- 発音を録音して自分の苦手な音を正しく理解する
- 毎日継続して練習を繰り返す