発音番外編01. イギリス英語の特徴
オーストラリア・ニュージーランド英語のルーツを辿るとイギリス英語から派生しているものであると分かります。つまりこれらの英語でリスニング力を伸ばすためには、イギリス英語の違いも理解しておく必要があるということです。
ということで、このレッスンではイギリス英語とオーストラリア英語の特徴を例文を交えて紹介します。
1. イギリス英語の特徴
イギリスにはいろいろな方言がありますが、このレッスンでいうイギリス英語とはいわゆる標準語の発音という認識で進めていきます。
イギリス英語はいわゆる「r なし(r-less)」と呼ばれています。もちろん “red” や “sorry” のように母音の前の[ r ]が消え去っている訳ではなく、語尾や子音の前に「 r の色合いの母音がない 」ということです。
早速「r なし(r-less)」の感覚を例文を通して確認していきましょう:
- His father was an artist.
- The car disturbed the calm.
赤字で下線をを引いた部分は本来 [ ɚ ] と発音されますが、音源では [ a: ] と発音されています。
続けて以下の例文も聞いてみましょう。同じように [ r ] の音色が本来入る部分で、 [ ə: ] [ iə ] [ eə ] [ ɔ: ] というように発音されています。
1-1. [ r ] の音が [ ə: ] に変化するケース
- The bird is a little nervous.
- Without your twirling the earth can spin.
1-2. [ r ] の音が [ iə ] に変化するケース
- We’re here to hunt deer.
- His beard makes him look weird.
1-3. [ r ] の音が [ əa ] に変化するケース
- I can’t bear this stale air.
- These types of chairs are pretty rare.
1-4. [ r ] の音が [ ɔ: ] に変化するケース
- I was bored with the board meeting.
- I need more horses.
いずれの音もアメリカ英語に比べて「舌の位置の低い部分」で発音されていることを意識してもう一度音声を聞いてみましょう。アメリカ英語に比べると、どことなく暗い・落ち着いたイメージの音に聞こえると思います。
また英語の性質も時代と共に変化しており、前世紀の初め頃は [ bore, more, door ] などの音は [ ɔə ] と発音していましたが、現在は [ ɔ: ] で統一されています。そのため、[ caught / court ] [ bawd / board ] [ bort / bought ] などの発音が全く同じように発音されます。
同じように [ tour ] [ gourd ] などに [ uə ] が以前用いられていましたが、現在は全て [ ɔ: ] で発音されます。
以上のことを踏まえて、以下の単語を聞いてみましょう:
- moor [ mɔ: ]
- tour [ tɔ: ]
- gourd [ gɔ:d ]
- poor [ pɔ: ]
- sure [ ʃɔ: ]
- curious [ kjɔ:riəs ]
- secure [ sikjɔ: ]
- endure [ indjɔ: ]
- your [ jɔ: ]
- your’re [ jɔ: ]
「rなし(r-less)」と言われるイギリス英語ですが、語形変化や次に続く語が母音で始まっていたりすると [ r ]の音が発音される特徴があります。例えば bore は [ bɔ: ] ですが、boring は [ bɔ:riŋ ]、care は [ keə ] なのに carer は [ keərə ] と発音されます。
参考までに以下の単語の音を確認してみましょう:
- after a while [ a:ftr ə wail ]
- over and over again [ əuvr ənd əuvr əgen ]
- father and son [ fa:ðr ən sʌn ]
- more and more people [ mɔ:r ən mɔ: pi:pl ]
最後にイギリス英語はアメリカ英語に比べて「音の簡略化」が顕著です。人によっては February [ februəri ] を [ febri ]、library [ laibreri ] を [ laibri ] と発音する人も少なくありません。
簡略化が顕著な例として、以下の単語と例文を聴いてみましょう:
- Secretary [ sekrətri ]
- momentary [ məuməntri ]
- sedentary [ sedntri ]
- category [ kæṭəgri ],
- inhibitory [ inhibitri ]
- allegory [ æligri ]
- The manuscript was destroyed by a fire [ fa: ].
英語では、[ fire / flower / player / slower / employer ] などの「三重母音」があります。イギリス英語では慎重に発音する場合を除いて、通常真ん中にある音声を省略して発音されます。そのため例文では [ fάɪɚ ] ではなく [ fa: ] と発音されています。